うどん二郎 備忘録

長めの文章はここに上げます。メモ書き程度。

SONGS・小沢健二特集の感想

SONGSの小沢健二特集(2017年10月5日)、とてもユニークで素晴らしい放送だった。そういえばオザケンは、「想像力」(『我ら、時』)でも「一番ときめく風景は、新しい目で見る、見慣れた風景だったりする」と言っていた。「既知」のものが「未知」のものに「突然入れ替わる」体験を音楽やことばにするこの稀有な歌手。同じように、私たちの「既知」も「未知」に変わる。
たとえば「天使たちのシーン」の13分半を体験するごとに、このなんでもない生活の中のなにかが、いままで想像もしなかった仕方で、豊かになっていくんだろうと思う。
本当に強度のある作品(文学でも、音楽でも、映像でも)というのは、それに触れる前と後では、世界に対する自分の態度や、自分の中に流れる時間がどこか変わったという感覚があるはず。それらの曲を聴いて時間がゆっくりになって、世界を見る解像度が上がって気づかなかったものに気づいて、そうして自分の使ってる言葉が変わって、朝まだき暗がりで、明日を待てないという不安を抱える人にも優しくなれるとしたら。
「明りをつけて 眩しがるまばたきのような 鮮やかなフレーズ」は、怯える彼ら/彼女らが、賑やかな場所を想像できるよう、歌われる。想像できないとしても、せめて生きることを諦めてしまわぬように……。
でもこの感想は、ちょっと感傷的すぎるかな。

Please don’t baby. Don’t go(!)