うどん二郎 備忘録

長めの文章はここに上げます。メモ書き程度。

スピッツ「子グマ! 子グマ!」と「コメット」(『醒めない』)の擬人法

スピッツの擬人法はクサくなくていい。

「子グマ! 子グマ!」は多分親クマの視点で語られているのだろうけど、たとえば「半分こにした 白い熱い中華まん 頬張る頰が好き」という一節の具体性や、「間違ったっていいのにほら こだわりが過ぎて 君がコケないように 僕は祈るのだ」という部分に見られる(ごく普通の意味での)人間性が、全体の「包容力」を支えてる。
最後の「バイバイ僕の分身」と「君が遠くなっても 笑っていられそう 強がっていられそう」は感動的。
「コメット」は「黄色い金魚のままでいられたけど 恋するついでに人になった」と、あえて最初に、この詞が擬人法を用いていることを明らかにしてる。
続く「押し寄せる人波に 流されないように 夕暮れ ホームへ駆け上がった」で上方に視線を向けさせて、「コメット」の持つ多義性(金魚/彗星)を意識させる。うまく話を逸らしてるっていうのかな。金魚が本来持ち得ない「言葉」への言及があったかと思えば、「切れそうなヒレで 泳いでいくよ 想像より少し遠いとこ」と、(彗星のイメージを同時に伴って)また変身してみせていて、「見えなくなるまで 手を振り続けて また会うための生き物に」という一節で、これまた最初の「ホーム」の多義性(駅舎/家)が浮かび上がるようになってる。
それにしても「可愛らしい戯言に救われた」とか「心が砕けて」とか、惹かせるなあ。一節一節が微妙につながってないのもいい。まあ、それらの「作為」自体がクサいと言われればそれまでだけど……。